オリジナルというと、独創的なものとか原作などの意味でわたしたちは普段使っています。CambridgeにはAn original piece of work, such as a painting, etc. is produced by the artist and not a copyとあります。いわゆる原画とか原曲とか原作の意味として使われるoriginalの定義です。an original work of art(芸術作品の原作) とかan original text (原本) といった場合に出てくる original です。しかし、たとえば「初演」のことをthe original performanceといったり、ことばのそもそもの意味、つまり「原義」のことをan original meaningといったりすることがあります。その場合、originalはexisting since the beginning, or being the earliest form of something (Cambridge) ということで、「はじめからいる/ある」ーー簡単にいえば「最初の」という意味で使われます。日本語のオリジナルということばにはこの意味、つまり最初に存在していた、という意味が希薄な気がしますが、どうでしょうか。 Is this an original Rembrandt? (= Was it painted by him?)(これはレンブラントの描いたものですか) (Cambridge) この場合はコピーではなく「原画」ですかというわけです。Oral Lee Brown was very happy because 19 of the original 23 had gone on to college. (最初の23人のうち19人が大学へ進学したので、オーラル・リー・ブラウン先生はとてもうれしかった)

hold up ~  「~を阻止する;~を持ち上げる」映画なんかで警察が犯人を追いつめて「手をあげろ!」と叫ぶときにhold upといったりするのを耳にしますが、これはhold your hands up / hold up your handsで「手をあげて動くな。止まれ」ということで、体操みたいに「両手を上げていろ」というよりも「じっとしていろ」と言いたいわけでしょう。このようにholdは動いているものを止める意味を持ち、目的語を取って他動詞になると「何かを阻止する」といった意味に発展します。holdのイメージは、たとえば誰かがはしごの上っているときに、はしごをしっかり押さえて動かないようにする感じです。つまり「しっかり握る」「しっかりと支える」というのが本来の意味。upはtie up the package (荷物をしっかり縛る)とかEat up your breakfast! (朝ごはんを残さないで) といったときのupで「すっかり」とか「しっかり」といった「完成」や「終結」を表すupと捉えればいいのかなと思います。The committee held up the investigation. (その委員会はその調査を阻止した)(中央)この「阻止する」つまり「止まれ」という意味合いが「ちょっと待て」へと派生していくと、 “Hold up! You dropped something!” “Thank you.” (「ちょっと待って。何か落とし物をしましたよ!」「ありがとう」) といったありふれた日常の出来事の中にも現れてきます。さて、このhold upで厄介なのは、hold up asとなる場合です。「~を事例として持ち出す,(手本・模範として)掲げる,示す」といった意味で使わる成句です。The teacher held her up as a model of good behavior (その教師は行儀よさのお手本として彼女を挙げた) こんな風に誰かを模範生として紹介する教師がいますが、個人的にはうんざりします。Chiune Sugihara has been held up as as a shining example of dignity and courage.(杉原千畝は気高さと勇気の模範として挙げられている) このようにこのasを伴ったhold upは普通受け身形で使われます。どうしてこのような意味として使われるようになったのかALTに訊ねてみましたら、中世の大きな教会と関係があるのではないか、ということでした。教会堂にはさまざまな使徒の彫像とか絵が掛けられています。当時、ひとびとは読み書きができないために使徒や聖者の彫刻や絵画を見上げることで聖書の物語を知った(あるいは教わった)わけです。たとえばユダヤ教から改宗した人物の例としてパウロ像を見上げていた。hold upはここではlook upと捉えてもいいでしょう、ということでした。面白い解釈です。キリスト教と英語は切り離せない部分が多いと感じました。

disprove :「誤りであることを証明する」普通動詞に接頭辞disが付くと動詞はapart / away (分離)やnotの意味を帯びます。たとえば、disagreeはお互いの意見が離れている(apart)から「同意しない」となり、disobeyは「従わない」distrustは「信用しない」となります。ですから、disproveは「証明しない」となりそうですが、「間違いを証明する」という意味なので間違いそうな動詞のひとつです。dis=notだからdis+prove=not+prove,つまり「証明しない。もしくは証明できない」と考えがちですが、「間違っていると証明する」to prove that something is not true (Cambridge)というのがdisproveの意味です。ここでのdis-には思い切って「失敗」とか「間違い」の意味にとって、失敗、間違いを証明するという風に考えても面白いと個人的には思っているのですが……。Various experiments have failed to disprove the theory. (さまざまな実験がその理論が誤りであることを証明できなかった) Human beings can neither prove nor disprove God’s existence. (人類は神の存在を証明することも反証することもできない)

It's essential to be able to communicate with the performers. (演奏者とコミュニケーションできることが不可欠です)(浜島書店) のように不定詞が続く場合は形式主語itを受けているわけですからessential to 不定詞となります。さらにIt's essential for the papers to be ready today. (レポートは今日中に準備が出来ていることが絶対必要です) (Tanaka Corpus)となると意味上の主語が付いていますから、essential for~to doの形になります。紛らわしいのは、たとえば、Food is essential to [for] life.というような場合です。たいていの英和にはbe essential to / for~としてあり、to とforの使い方の違いは説明されていません。Good water is essential to good sake.(よい日本酒にはよい水が不可欠だ) この文からだけではなんとも言えませんが、toは到達点ですから、よい日本酒を作るのが到達点だと考えればいいのかもしれません。そのためによい水は不可欠だというわけでしょう。Two types of mould are essential for brewing sake.(日本酒を造るには2つの菌が重要な役割を果たします)この訳文にあるように、forは役割、働き、などを指すように思えます。Food is essential to life.は人生の到達点を意識しているのではないでしょうか。幸福とか豊かさとかあるいは健康とか。そのような人生を送るにはfoodが不可欠だと。Food is essential for lifeであれば、暮らしにとって食べ物は大切な役割を果しているというのでしょう。とはいえ、なにか釈然としないものが残りますが……。

I couldn’t care less 「まったく気にしない」直訳するとthan以下がないので「今より」とか「そのときより」などを補えば分かりやすいと思います。notはcare less (今より少なく気にする) を否定しますので、「今より以上に少なく気にすることはできない(ほど気にしていない)」となります。つまり「全く気にしない」ということです。couldは仮定法で、もし気にすることがあっても、と補って考えればいいでしょう。ちなみにto not care at allとCambridgeにはありました。I couldn't care less if he doesn't want to talk to me. (彼がぼくと話したくないとしてもまったく気にしないよ)(Cambridge) 学生の頃「俺の知ったことか」と訳してあるのを目にして、うまい訳だなと思ったことを覚えています。なお、couldn’t+比較級の形でよく耳にするのに、(I) couldn’t be better.(「今より(それより)よくならないくらいによい」→「最高だ」)があります。”Where do you want to go?” “ I couldn’t care less. I just want to leave the train right now.” (「どこに行きたい?」「どこでもいいわ。ただ今すぐ列車を降りたいだけ」)

cut back on~ 「~を削減する。縮小する」to spend less, do less, or use less of somethingとCambridgeにはあります。この成句に登場するbackはhold back the laughter (笑いをこらえる) などに使われる「抑えて」という意味の副詞ではないかと思います。構造はきれいな動詞+副詞+前置詞のコンビネーションです。Cambridgeにもあるように「少なく使う」つまり「使うのを控える」「削減する」といったニュアンスで捉えればいいと思います。同意表現に cut down onがありますが、cut back onの方が普通に使われるそうです。また、cut down onよりも冷静な判断をするニュアンスがあるとのこと。cut outは完全に枝葉を切り落とすことですが、cut backは枝葉を減らすとイメージしてもいいでしょう。The record label Hyperion is now drastically cutting back on new projects to pay royalties. (レコード会社のハイペリオンは特許使用料を払うために、現在新しいプロジェクトを大幅に縮小している)(CNN) We really need to cut back on our spending until the coronavirus goes away.  (私たちはコロナが終息するまで本当に出費を抑えなければならない) In doing so, the bees are able to progressively cut bac on energy use. (このようにして、蜂は段階的にエネルギー消費を抑えることが可能になる)

hale and hearty 「老人がぴんぴんしている」「かくしゃくとしている」Cambridgeには (especially of old people) healthy and strongとありました。お年寄りに使うと考えればいいと思われます。haleはhealthyと関係のある語で、病気がひとつもなく元気だといった意味。heartyも同じような意味で、活発に活動しているといった意味です。おそらく [h] の音でそろえて成句にしたのだろうと思われます。いわゆる言語学でいうところの alliteration (頭韻)です。He is hale and hearty for his age. He is working from home today. (彼は老人のわりにはぴんぴんしている。今日もリモートワークをしている). Her grandfather was hale and hearty, walking five miles each day before breakfast.(彼女の祖父はかくしゃくとしている。毎日朝食まえには8キロぐらい歩いているよ)(Cambridge)