「水泡に帰す」は英語ではgo up in smokeと「煙」になります。燃えて煙になって消えてしまう、というイメージなのでしょう。もっとも「灰燼に帰す」という日本語もありますから、あながちsmoke (煙)と無縁ではなさそうです。 His business went bankrupt, and 10 years of hard work went up in smoke. (彼の会社は倒産してしまい、10年におよぶ激務も無駄に終わった) このように努力したのに無駄に終わったといった感じです。 When the economic bubble burst, their plans to build many schools went up in smoke. (バブル経済がはじけたとき、たくさん学校を作ろうという彼らの計画は水の泡となった) 煙といえば、徒然草に「鳥部山の煙立ち去らでのみ住み果つるならいならば、いかにもののあわれもなからん」と煙が出てきます。一方、水といえば、方丈記に「ゆく河の流れはたえずして、しかももとの水にあらず」とあって、どうも「水」や「煙」は日本語では無常観と関係が深いようです。この成句go up in smokeにも無常観に似たものを感じるかとALTに訊ねたところ、無駄になったというだけの意味しかない、ということでした。無常観というと、どんなイメージでとらえていますか、と重ねて訊ねたら、life is shortという返事でした。それを聞いて、英語はどこまでも人生に対してポジティブな言語だと思いました。たとえば、Viktor Franklの言葉、"Say yes to your life in spite of everything"を直訳して解った気になるのは簡単ですが、この名言が引きずっている文化を踏まえて訳すとなると容易ではないですね。