「もりもりもりあがる雲へあゆむ」という山頭火の句がふと浮かんでくるような雄大で力強い白い雲が出ていました。同じ雲のうたでも「おうい、雲よ」と親しげに雲に語りかける山村暮鳥の「雲」という牧歌的な詩がありますが、こちらは「雲」というタイトルがついています。山頭火にかぎらず、俳句にはタイトルをつけないようです。「古い池や」といえば芭蕉の有名な句を指しますが、そしてそれはタイトルと言ってもいいいような気がしますが、個人的には俳句にはタイトルがない。というか、五・七・五でうたったもの全体がタイトルではないかと思っています。ところで、titleというと「題名」という意味のほかに、肩書とか称号の意味があります。タイトルマッチというのもチャンピョンという肩書を取る試合ということでしょう。 job titleというと会社などの組織内での役職を指しますから、これも肩書でしょう。本のタイトル( the title of a book)も女王の称号(the title of queen) も同じtitleですから、ちょっと戸惑います。ポーの詩にThe Ravenというのがありますが、ポーはその詩にThe Ravenというtitleをつけたわけです。What is her job title? と訊かれて、She is the Vice-President. と答えれば、titleはvice-presidentになります。このようにtitleは同じ語、同じもの、相応しい人・もの、を指すととらえればいいような気がします。Time magazine revealed its highly anticipated Person of the Year. The title goes to “the silent breakers.” (タイム誌は、大いに待ち望まれていた同誌の「今年の人」を発表した。その称号は「沈黙を破った人たち」に与えられた)(CNN)ここではtitle=Person of the Yearということでしょう。なお、「沈黙を破った人たち」とはセクハラや性的暴行の体験を告白した人々を指しています。