楽してもうかる組織とか仕事のことをgravy trainといったりします。gravyは「肉汁」という意味から「甘い汁」という意味で使われるようになったのでしょう。その甘い汁を運ぶ列車、つまり組織や仕事に乗りさえすれば、甘い汁をずっと吸っていられるというわけです。わたしたちも「甘い汁を吸う」などと使ったりする「甘い汁」ですが、なんと英和にはride the gravy trainの訳に「甘い汁を吸う」と載っていました。どうも違和感を覚えて「甘い汁を吸う」を国語辞典で調べてみました。すると、「自分で苦労せずに、人を利用して利益をむさぼる」とありました。わたくしが気になるのは「ひとを利用して」というニュアンスですが、それはgravy trainには希薄な気がします。英語のgravy trainの方は日本語の「甘い汁」のようなネガティブな意味合いはないからです。もっとも資本主義社会では「甘い汁」など吸っていては実力を疑われてしまうでしょう。Cambridgeにはa way of making money quickly, easily, and often dishonestlyとかan easy way of making money without doing much workなどと説明されていますから、人を利用して私服を肥やすといったニュアンスはないですね。This job is a gravy train.というと普通「給料がよくて労働時間が短い」といったニュアンスで捉えればいいようです。The CEO gravy train is still rolling. (CEOというぼろもうけの職はいまだに健在なのです)重役たちの乗る列車、つまりgravy trainの後に労働者たちの列車がずっと続いている光景をイメージする必要があると思います。 ところで、我が国では残念なことに「甘い汁」とは国民の税金なのだなと思ってしまいます。議員活動費の私的流用、公共事業の受注に絡む政治家との癒着、などなど「甘い汁」が吸えるならどんなことでもする、といったタイプの企業や人間が増えてきたように感じるのですが……。