hold up ~  「~を阻止する;~を持ち上げる」映画なんかで警察が犯人を追いつめて「手をあげろ!」と叫ぶときにhold upといったりするのを耳にしますが、これはhold your hands up / hold up your handsで「手をあげて動くな。止まれ」ということで、体操みたいに「両手を上げていろ」というよりも「じっとしていろ」と言いたいわけでしょう。このようにholdは動いているものを止める意味を持ち、目的語を取って他動詞になると「何かを阻止する」といった意味に発展します。holdのイメージは、たとえば誰かがはしごの上っているときに、はしごをしっかり押さえて動かないようにする感じです。つまり「しっかり握る」「しっかりと支える」というのが本来の意味。upはtie up the package (荷物をしっかり縛る)とかEat up your breakfast! (朝ごはんを残さないで) といったときのupで「すっかり」とか「しっかり」といった「完成」や「終結」を表すupと捉えればいいのかなと思います。The committee held up the investigation. (その委員会はその調査を阻止した)(中央)この「阻止する」つまり「止まれ」という意味合いが「ちょっと待て」へと派生していくと、 “Hold up! You dropped something!” “Thank you.” (「ちょっと待って。何か落とし物をしましたよ!」「ありがとう」) といったありふれた日常の出来事の中にも現れてきます。さて、このhold upで厄介なのは、hold up asとなる場合です。「~を事例として持ち出す,(手本・模範として)掲げる,示す」といった意味で使わる成句です。The teacher held her up as a model of good behavior (その教師は行儀よさのお手本として彼女を挙げた) こんな風に誰かを模範生として紹介する教師がいますが、個人的にはうんざりします。Chiune Sugihara has been held up as as a shining example of dignity and courage.(杉原千畝は気高さと勇気の模範として挙げられている) このようにこのasを伴ったhold upは普通受け身形で使われます。どうしてこのような意味として使われるようになったのかALTに訊ねてみましたら、中世の大きな教会と関係があるのではないか、ということでした。教会堂にはさまざまな使徒の彫像とか絵が掛けられています。当時、ひとびとは読み書きができないために使徒や聖者の彫刻や絵画を見上げることで聖書の物語を知った(あるいは教わった)わけです。たとえばユダヤ教から改宗した人物の例としてパウロ像を見上げていた。hold upはここではlook upと捉えてもいいでしょう、ということでした。面白い解釈です。キリスト教と英語は切り離せない部分が多いと感じました。