write in longhandは「手書きで書く」という意味です。なぜそんな意味になるのかアメリカ人に訊ねたところ、筆記体は文字と文字がつながっているので長くなるからではないか、ということでした。なるほど、とそのときは思いましたが、速記(shorthand)だってつながっているじゃないかと思い返して、どうも釈然としないままです。とはいえ、英語の速記なるものがどんなものか分からないのでなんとも言えませんが、まあ、ともかく手書きは文字がつながっているからlonghandなのでしょう。He wrote a Christmas card every year in longhand.  

live up to ~ は「期待に応える」といった意味で使われます。動詞+副詞+前置詞のコンビネーションですが、upはA dog came up to me.などに出てくる「接近」を表すupでしょう。to は get toのtoで「方向」あるいは「到着点」と考えられそうです。期待されているところへ向かって近づいていくということから「期待に応える」といった意味になると考えればいいのではないかと思います。You ought to live up to your parents' hopes. (あなたはご両親の期待に応えるべきだ)(早大)The Spanish village of Sort, which means “luck” in Catalan, has lived up to its name. (ソルトというスペインの村は、カタロニア語で「幸運」を意味するのだが、その名を裏切らなかった)(CNN)

lick は「なめる」という意味の他にto solve a difficult problem (難しい問題を解決する)という意味があります。動物でも人でも傷口をなめて一時的に応急処置をします。そのようなことから「なめる」→「傷口を一時的に処置する」→「問題を解決する」という風に発展していったのではないかと思われます。She has licked her weight problem. (彼女は体重の問題を克服した)(レクシス) He has licked his hemorrhoids. (彼は痔を克服した)このように病気などにも使われます。 漱石が痔で苦しんだことをふと思い出して、こういう文を作ってしまいました。

signature は自分で書いた自分の名前、つまり署名のことですが、その他に「特徴的な」(characteristic) という形容詞があって、ちょっと戸惑ってしまいます。Our signature dish is Chawanmushi. (当店の特製料理は茶わん蒸しです)とかWhat is Kumamoto’s signature food? (熊本の代表的な食べ物はなんですか)などと言ったりして、食べ物に関係するものにsignatureは使われることが多いようです。The café is decorated with Tiffany’s signature robin’s-egg-blue color. (そのカフェはテイファニィの特徴色であるロビン・エッグ・ブルーで装飾されている) 署名は極めて個人的なもので、一人一人特徴があります。というか、特徴的でなければ困るわけです。たとえば、トランプ大統領のsignatureなどはかなり独特ですね。他と区別される特徴的なのが署名ということから、signatureにこのような意味があるのだろうと思われます。

机の上にコーヒーをこぼしてしまい、大慌てで拭き取っていたら、机の隅からDavid Weatherfordのメッセージみたいなのが出てきました。We enjoy warmth because we have been cold. We appreciate light because we have been in darkness. By the same token, we can experience joy because we have known sadness. こういう言葉に出会うと、明暗がくっきりしていて、すっきりします。暖かさ――寒さ、光――闇、存在――非存在、こういった対立を提出したのはギリシャの哲学者パルメニデースなんだそうです。彼は肯定的なものと、否定的なものに分けてものごとを捉えようとしたようです。たとえば、暖かさ、光、存在、喜びなどは肯定的なもの、寒さ、闇、非存在、悲しみといったものは否定的なものといった具合に。そしてのちに物議をかもすことになったのが、「軽さ」を肯定的、「重さ」は否定的としたということでしょう。そして二千年以上も経って、重さ―軽さという対立はあるのか、という問題を小説にしたのが、ミラン・クンデラの「耐えられない存在の軽さ」(The Unbearable Lightness of Being) ということになるのでしょう。ヨーロッパは深いですが、David Weatherfordの方が単純で生きやすい気もします。

long for ~ (~を切望する) は本来、距離を表すlongが時間へと転化したと考えればいいのではないかと思います。つまり、long distance ではなくlong timeという風に。日本語にも「首を長くして待つ」という表現がありますが、この言い方(由来は延頸挙踵だそうです)にもlongと同様、距離と時間の融合が起こっていて、面白いなと思います。つまり、首が長いのでlongではなく、長い時間待ち望むのでlongというわけです。There is no one but long for peace and security. (平和と安全を切望しない人はいない)(武蔵大)前置詞forは「期待」でしょう。不定詞がつづくと、「~することを強く望む」といったニュアンスになります。He longed to be left alone. (彼はそっとしておいてくれるように切に望んだ)

little by little (少しずつ )はgraduallyということですが、少しはあるのだから、a little by a littleではないかと思いがちですが、そうはなりません。これは畳語なので冠詞がつかないのです。step by step, hand in handなどと同じです。byはday by dayなどに用いられる「~ずつ」という意味で「程度・差」を示すと考えればいいでしょう。 Little by little his English improved. (彼の英語は少しずつ進歩した)(立命館)littleはsmallと違って、感情が入るので、「こつこつ」努力している、わずかずつだが進歩している、といったニュアンスを持つのかもしれません。Little by little, my grandson began to feel better. (少しずつ孫は元気を取り戻しはじめた) なおlittle by littleにカンマをつけるかどうかは個人の好みによります。長いと感じたらカンマを打てばいいし、短いと思うのであれば打たなくていいのです。