orientation 天気予報などで「北北東の風。風力3」のようにアナウンスしますが、日本語は東西を軸にしますから、「北北東」ではなく「東北北」となりそうなのに、気象に関しては東西を軸にしていないようです。「南東の風」は耳にしますが「東南の風」というのは聞いたことがありません。ちょっと不思議です。さて、orientationはorient、つまり「東洋」あるいは「東」と関係の深い語ですから、日本語の発想と同じだなと思ったりしますが、その背景にはキリスト教的なものがあるような気がします。イエスが生まれたときに 東の方から(といってもエルサレムから東の方) 三人の学者がイエスを、つまりメシアを拝みに来るというエピソードは有名ですが, キリスト教の教会の主祭壇を東に設置するようになったこととこの物語は何らかの関係があるのではないか、と思っています。ともあれ、そのように祭壇を東に向けることから、当時「東の方向」が「正しい方向」だと考えられていたことが分かります。そこで、orientationは「東向き」という意味が原義だったと考えられそうです。さらに、この語は「(個人の)志向,信条」「(社会などの)方向性,傾向,動向」といった意味に派生していきます。いずれも「方向性」という共通点があることが特徴的です。たとえば、political [religious] orientationというと「政治[宗教]的信条」といった意味になります。Cambridgeにはthe particular things that a person prefers, believes, thinks, or usually does. と個人的なあるいは私的な傾向なり信条なりを指すと定義してありますから、社会性というよりも個人的な考えや指向に重点があることがわかります。 We employ people without regard to their political or sexual orientation.(私たちは政治的信条や性的指向に関係なく雇います)(Cambridge) Schools teach pupils aged 4 to 11 about different races, religions, gender identity and sexual orientation, a key point of contention for the protesters. (学校では4歳から11歳の子どもたちに異なる人種や宗教、性自認性的指向について教えます。抗議をしている人々が特に問題視しているのがこの性的指向についてです) (CNN) ちなみに,この文の最後のカンマはいわゆる「同格のカンマ」です。