up the creek (without a paddle) ずいぶん昔のことですが、シカゴ出身の女性のALTが何かの拍子にこのフレーズを口にしたのをなぜか鮮明に覚えています。どうしてよいか分からないほどひどく困っているときに用いられる、口語表現です。直訳すれば「櫂なしで川の上流にいる」ということですが、「こっちへ戻ってこなければならないのに、櫂がないからどうにもならない」ということから出来たイディオムだそうです。Now they are up the river without a paddle. (まさに彼らは窮地にたっている)  We don't have a spare tire. If we have a flat on this mountain road, we'll be up the creek without a paddle. (私たちはスペアタイヤをもっていない。もしこの山道でパンクでもしようものなら確実にお手上げだ)(アメリカ口語辞典)

up in the air「未定で」「漠然としていて」たとえばラグビーとかサッカーとかテニスなどの試合で攻撃やサーブの順序を決めるために、コインを上に放って、つまりコイントスをして、決めることがありますが、コインが空中にある状態 (up in the air)ではどうなるかは「未定」です。そんなことからこの成句にはuncertainの意味合いがあるのだと説明してくれたALTがいましたが、なるほど面白いなと思いました。The government left the matter up in the air again. (政府はその問題の決定をまた先送りした) そういえば、赤字国債をゼロにすると約束した首相がいましたが……。They want to spend the summer holidays in Akashima, but it is still up in the air. (彼らは赤島で夏休みを過ごしたいと思っているが、まだはっきり決まっていません) 赤島は五島列島に浮ぶ美しい島です。

up and down :「上がったり下ったり;あちこちに」文字通り上がったり下ったりという意味で使われます。Children were up and down the stairs all day. (子どもたちは一日中その階段を上がったり下ったりしていた) The lights from the boat rocked gently up and down with the current. (小舟の灯りが河の流れに任せて上下に静かに揺れていた)  上下だけでなく左右の場合も用いられます。ただし、厳密にいえば、同じ場所あるいは同じ距離を行ったり来たりするのがup and downです。The man walked up and down the aisle. (その男は通路を行ったり来たりした)  ちなみに、ups and downs と複数(この場合は名詞)になると「運勢・人生などの浮き沈み」を意味します。Life is full of ups and downs. (人生には浮き沈みがつきものだ) この意味でのupは良いとき、downは悪いときと考えればよいでしょう。つまりbad times and good timesということですから、複数形になるわけです。I had lots of ups and downs, both personally and professionally. (プライベートでも仕事でも多くの浮き沈みを経験しました)

unit:「部署」という意味の場合は、チームを組んで働くセクションと捉えたらいいのかなと思います。  He works as the head researcher for their cancer research unit. (ガン研究部主任として彼は働いている) この文のように病院とか医療の部署に使われることが多い気がします。英和には「一団」と訳されていることがありますが、大きな組織とか会社などの一部局で一緒に働く人たちを指す場合には「一団」はどうもしっくりこないように思われます。「人たち」ぐらいでどうでしょうか。a unit of Hong Kong Shanghai Bank (香港上海銀行で働いている人たち)組織から機械になると、大きな機械の部品とか装置の意味になります。Heating other liquid may damage the heating unit. (他の液体を温めると、加熱装置を傷つける可能性があります) I can’t understand storage units in a computer (コンピューターの記憶装置が理解できない)More than a million residential units will house 5 million people. (100万戸を越える集合住宅に、500万人が暮らすことになる) この場合には生活に必要なガスとか水道とか電気などがそろっている同じ作りの住宅ということからunitを使っているのでしょう。このように罹災した人々の仮設住宅などがunitの感じです。

under way :「進行中で」活動、計画などが進行中である、という意味で使われます。under consideration (検討中)under construction (建設中)under repair (修理中) など、何かがなされている最中であることを表すときに登場するunderです。under wayは元来船が航行中であることを指していたようです。そこから人や物が活動中である、あるいはget under wayのように活動をはじめるという意味へと発展したのでしょう。なお、副詞のunderは程度・範囲・数量などが下まわっているということから「不十分」の意味を表すことがあります。そこで、under wayで物事が「完成まで不十分である、進行中である」の意味になると考えてもいいと思います。Preparations are now under way. (準備は進行中である)(東大)Preparations for the athletic meet are under way. (体育祭の準備が進んでいます) さらに、underとwayを繋げてunderway と1語で使われることもあります。The investigation is already underway. (調査はすでに始まっている) (レクシス)  We can have construction underway within two weeks. (わが社では、2週間以内に工事を開始することができます) この文のように、名詞を修飾できるところがunder  way と若干異なるところではないかと思うのですが……。

under the weather :「体の調子が悪い」もともとは「船酔いしている」という意味だったそうです。イギリスは海洋国ですから、この類の表現は多いですね。weatherはbad weather(悪天候)を意味します。「悪天候の下」つまり船室で休まなければならないほど船酔いがひどかったということから生まれた表現のようです。そこから「体調が悪い」「具合が悪い」といった意味に発展していったのでしょう。たぶん。He's been under the weather lately. (彼はこのところ加減がよくない) I'm feeling a bit under the weather - I think I'm getting a cold. (ちょっと身体の調子が悪い。風邪をひいたんだと思う)(Cambridge) ところで、陽射しが美しかったので散歩に出たら、農家のおじいさんがトラクターを操って田畑をならしてしました。農家には休日などないのです。おじいさんから元気をもらいました。

under one’s belt :「すでに体験して」「経験を積んで」といった意味。どうしてこういう意味になるのかALTに訊ねたところ、柔道などの黒帯をイメージすればいいではないか、ということでした。つまり、柔道でいえば、もう一人前にわざなども習得している、とみなされて黒帯になるから、というわけです。柔道はあまりに日本的すぎるので、本当かなと思って、『米語口語辞典』にあたってみたところ、under the beltは「胃袋」を意味し、「食べ物が腹におさまっている」が原義とありました。そこから比ゆ的に「経験」「実績」が「腹におさまっている」つまり「すでに体験している」という意味になったとのこと。ALTの説明を鵜呑みにするのは危険ですが、柔道のイメージもあながち捨てたものではないな、とも思いました。原義を知っておくことは大切ですが、その表現を実際に使えなければなんの役にも立たないことですから。Joan loves to travel. She already has three trips to Japan under her belt. (ジョーンは旅が好きで、すでに日本には3回行った) If you finish the course, you will have a new skill under your belt. (課程を修了したら、新しい技術が身に付くでしょう)(英辞郎)