humorはhumanと綴りが似ているので語源は同じだろうと思いがちですが、humorはhumidと同様、「液体」を指す語だったので、「土」が語源のhumanとは語源的には別のようです。では、なぜ「液体」が人を笑わせるような意味合いを持つ語に発展したのでしょうか。それについては語源辞典を読めば詳しく書いてあるのですが、そんな衒学的な解釈を読んでもちっとも面白くないので、「笑えば、血流がよくなるからだろう」、laughter is a good medicineだからだろうと個人的には捉えています。

A sense of humour enables us to take many of our troubles lightly that might otherwise weigh us down.とKenneth S. Woodroofe先生はFour Essentials for Livingの中で述べています。つまり、ユーモアがその威力をいかんなく発揮するのは、troubleにあったとき、なかんずく戦争中、あるいは紛争中なのです。たとえば、1942年2月15日(シンガポール陥落の日) の記者とスポークスマンのやりとりなどはその典型といってもいいでしょう。その日、日本軍が侵攻してシンガポールが陥落したというニュースが入ってくると、記者たちは一斉にスポークスマンを取り囲み、政府の無能ぶりを非難しました。「日頃、イギリス兵1人で100人の日本兵にあたれるから、シンガポールは難攻不落だと言っていたのに、陥落したではないか」と。そのとき、スポークスマンは微笑を浮かべて、おもむろにこう答えるのです。「いやあ、あいにく、101人来たんだ」――その瞬間から、イギリス国民はface the musicの覚悟を固めたとぼくは思うのです。何万発の爆弾よりも一発のユーモアがイギリス人を奮い立たせたのではないでしょうか。