動詞driveを英和で引くと、車を運転するという意味の他に、「人をある状態・行為に駆り立てる」というのがあります。「自殺に追いやられる」(be driven to suicide)とか「破産に追い込まれる」(be driven into bankruptcy) 等々の例が挙げられ、通常受け身形で使われるとあります。いわゆる「被害」を意味する「受け身」ということでしょうが、Cambridgeにはto force someone or something into a particular state, often an unpleasant one (誰かがあるいは何かが特別な状況、しばしば不快な状況へ追いやられる) という説明があって、受け身に関する言及はありません。まあ、どちらでも使われるということなのでしょう。さて、forceを使って説明してありますから、人であれば、不快な状況に身をおかざるをえない、といった感じでしょう。なぜこのような意味合いを持つのかALTに訊ねたところ、carry something forward (前へ物を運ぶ) がdriveの意味だから、それがネガティブなニュアンスを持つとそのような意味で使われる、ということでした。driveというとすぐに車を連想してしまいますが、T型フォードが誕生してから百年ちょっとしか経っていません。その前は牛や馬を駆り立ててものを運んでいたわけです。そう考えると、この意味のdriveは「牛・馬」のごとく人間を扱かうという風に捉えればいいのではないかと思えてきます。There was a record high of more than 70 million people forcibly displaced in 2018. Most of that was driven by persecution, conflict or violence. (2018年、記録的な多さとなる70000万人超が移住を余儀なくされた。その大半が迫害、紛争、暴力によって引き起こされたものだ) 「迫害、紛争、暴力」といった非人間的な扱いを受けたために祖国を捨てざるをえなかったわけです。ところで、driveには自発的、積極的、組織的に物事を進めるといった意味もあります。たとえばa fund-raising drive (募金運動) とかa charity drive (慈善運動)とか a drive to conserve nature (自然保護運動)などのように、運動を推進するといった場合にも使われます。この場合も人々を駆り立てているわけですが、ポジティブです。このdriveという語にもプラスとマイナスが同居しています。