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infamousはアクセントの問題とか発音の問題などでしばしば顔を出す単語ですが、アクセントはinの部分に、発音はインフェイマスではなく、インファマスといった感じです。famousにinが付いているので、famousの反意語、つまりnot famous (有名ではない)ととらえがちですが、「有名なのです」。たとえばKKKのように実際に悪いことをするので有名だというのがinfamousです。The KKK is infamous for displaying cruelty to American black people. (KKKはアメリカ黒人に残酷なことをするので有名だ)(アメリカ英語表現辞典) 同意語にnotoriousがありますが、いつも何か特別なことをして「悪評がたっている」といったニュアンスでしょうか。This city is notorious for its high crime rate. (この町は高い犯罪率で有名である) なんとなくinfamousの方がnotoriousよりも悪質な感じがしますが……。
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call in sickは「病気で休みます」と職場などに電話で連絡するときに使われます。”Have you seen Shigeru?” “He called in sick today.” (「茂を見かけたかい?」「病気で休むって連絡があったよ」)といった感じです。この成句を文法的に考えるとinは前置詞ですから、sickのような形容詞が来るのには違和感があります。ALTに訊ねたところ、call in to the office and say you will not come to work because you are sick.と解説してくれました。やはりsickはyou will not come to work because you are sickが凝縮された、いわゆる付加のような働きをしていると考えればよさそうです。なおcall inで自分がどこにいるか、何をしているかを職場に電話するという意味で捉えればいいと思います。
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Finals start next week. I've got to start hitting the books tonight. (期末試験は来週からだ。今夜からうんと勉強しなきゃ)というのがhit the booksの例文として『アメリカ口語辞典』に載っています。hit the booksは簡単にいえばstudy hardということですが、hitは「打つ」という意味からか、何となく激しさとか勢いのようなものを感じます。典型的なのがhit the roof (癇癪をおこす)でしょう。怒りが屋根を叩くというのですから、激しいですが、「怒髪天を衝く」などに比べると、どことなくユーモラスです。さて、hit the booksと複数形になるのは何冊も本を読んで勉強するからだと説明してくれたALTがいましたが、おそらくそういうイメージなのでしょう。本の表紙をhitして、つまり叩いて、よしこれは読んだ、次はあの本に取りかかろう、といったイメージで捉えても面白いんじゃないかなと個人的には思ったりしていますが。
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in the air は 「(うわさなどが)広まって」といった意味で使われます。たとえば「その商社は倒産しかかっているといううわさが広まっている」といえば、There's another rumor in the air that the firm is going into bankruptcy.といった感じ。さらにupがついて up in the air となると「未確定で」といった意味で使われます。Things are up in the air.とかThat’s still up in the air.といえば、「それはまだ決まってないよ」といった感じ。air (大気)は目に見えない、不確かなものというところから、ほんとうかどうかはっきりしないうわさが広まっているとか、ものごとが決まっていない、まだ漠然としているなどの意味に発展したのでしょう。なお、airは「大気」を表すのでtheをつけます。the sun, the earthなどにつくtheです。ところで、同じような表現にin the windがあります。in the windというと、ノーベル賞を受賞したボブ・デイランの"Blowin' in the wind"を思い浮かべてしまいますが、これも「どうなるかはっきりしない」といった意味合いでしょう。因みに、inがonにかわって、 on the airとなると、「放送中」という意味です。電波が飛ぶのでairなのでしょうが、前置詞onはon fire(燃えている)とかon sale(売り出し中)のonと同じく「~中で」という意味で捉えればいいでしょう。You can't go in the studio. They are on the air now. (スタジオに入ってはいけない。今、放送中だから)
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in the soupという成句は 「窮地に陥って」とか「困って」といった意味。かつてアイルランドを襲ったジュガイモ飢饉(Potato Famine)のときに、困窮者に対してプロテスタントがスープを提供したことに由来しているらしいです。カトリック教徒にとってプロテスタントからスープを無料配給されるのは改宗に通じるということから、in the soupで「どうしようか困って」「窮地に陥って」といったような意味になったとのこと。If you lose your job, you are in the soup. (仕事をなくしたら、困ったことになる) I’m in the soup with my colleague. (同僚とまずいことになった) ここでのwithはget in touch withのwithなどに出てくる「関係」みたいな意味合いで捉えればいいでしょう。
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harnessの語源は「よろい兜」だそうです。馬に着せるよろいの意味から馬車の馬具一式の意味に派生したようです。これが動詞になると「馬に馬具をつける」ということから、「自然の力を動力源に利用する」という意味で使われます。馬に馬具をつけて馬車を動かす。そこから、馬を操るように自然の力を利用する、という風に発展したのでしょう。彼らにとって自然はあくまでも利用する対象のようです。それが自然科学を発展させたともいえますが。We are planning to harness the energy of the sun. (太陽エネルギーを利用する計画を立てています) They are looking at a promising prototype that can harness the power of human activity. (彼らが注目している有望な試作品は、人間の活動を動力源として利用するものです)
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identifyは,その人がだれであるか、その物がなんであるかをその特性などを手掛かりにして認識したり明らかにしたりすることをいいます。そこから「同じものであると認める」といった意味にもなります。 Many people identify wealth with success. (富を成功と考える人は多い)(アドヴァンストフェイバリット)再帰代名詞を目的語に取ると気持ちが同じになるというニュアンスになり、情緒的な意味合いが付加されるなるような気がします。You identify yourself with one of the characters. (あなたは自分が登場人物の一人になったような気分になる)(金沢大)このoneselfがとれたものがidentify with ~(~と同一視する)です。Children tend to identify with TV heroes. (子どもたちはテレビのヒーローになりきることがある) ところで「やれうつな / 蠅が手をする脚をする」という一茶の句がありますが、一茶はまさに叩き殺そうとしている蠅とidentifyしているわけです。