to one's heart's content :「心ゆくまで」直訳すると「こころが満足するまで」となりますが、なんとも詩的で素敵な句です。シェイクスピアかロマン派の詩人が口ずさみそうではないですか。この表現で最も特徴的で印象的なのは heart's とアポストロフィ(')sになっているところです。heartが満足すると、あたかも「こころ」が生き物であるかのようにーーもちろん、実際、「こころ」は一瞬一瞬をとどまることなく生きているのですがーー 使われています。いわゆる一種の擬人法として表現されているわけです。この成句のように、抽象名詞に-'sをつけるのは古典派やロマン派の詩などに頻繁に見うけられるもので、そのため今でも詩的な響きを感じさせるのではないかと思います。特にこの形でよく現れるのは、world, life, nature, heart, soul, spiritなどです。He was enjoying himself to his heart's content. (彼は心ゆくまで楽しんでいた)(早大)前置詞toは「結果」あるいは「到達点」を示すtoでしょうか。などと文法臭いことをいうのは、この句のもつromanticismをしらけさせる気さえしてしまいます。We talked to our heart's content. (私たちは心ゆくまで話した)