紀元前4世紀にギリシャからインド北西にまたがる大帝国を築いたのがAlexander the Great、つまりアレクサンダー大王、あるいはアレクサンドロス大王です。ペルシャ帝国を制圧しただけでなく、インドまでも征服したわけですから、尋常ではないですね。当時世界の果てと思われていたインドくんだりまで命がけで遠征しなければならなくなったとき、大王の真意を測りかねた兵士もいたでしょう。あるとき「いったいぜんたいこの大遠征で王は自分のために何を残したいのですか」と忠臣のひとりに問われて、大王は、「希望を残せれば、それでよい」と答えたそうです。自分のために残したいものは何もない。ひとびとに「希望」が残せればいいのだ、ということですが、なるほどアリストテレスの弟子だけあって、哲学的ですね。こういうのをcoolというのでしょうが、どこぞの首相や大統領とは明らかに格が違いますね。彼は32歳の若さで病死します。死因は西ナイルウイルスによる脳炎だったそうです。一度も戦いで敗れたことのない男がウイルスには勝てなかった。さほどにウイルスはひとを選ばないということでしょう。今コロナウイルスがいわば世界を席巻しています。彼が願った「希望」をこのウイルスははたして残してくれるでしょうか。