horrific 「恐ろしい」 Cambridgeを引くと、very bad and shockingといささか素気ない。そこでついでに、horribleを検索してみると、very unpleasant or badとこちらも負けず劣らず素気ない。もうすこし説明があってもよさそうな気がしますが、そこがこの辞書のシニカルなところで気に入っている理由のひとつでもあります。Cambridgeにもあるように、非常に不愉快で、よろしくないのがhorribleですが、I lost my glasses!. That's horrible! (なんてこった! メガネを失くしちまった) のように、日常起こるようなことに使われることが多いような気がします。これに対して、horrificは、たとえば The holocaust was a horrific tragedy.(ホロコーストはおぞましい悲劇だ) のように、ちょっとまともに目をむけらなないほど残酷で、非日常的でグロテスクなイメージがあるような気がします。Right near my home, a horrific car accident took the lives of eight people, four of them children. (家のすぐ近くでぞっとするような自動車事故が起こって8人の死者がでた。そのうちの4人は子どもだった)

gluttonについてCambridgeはa person who regularly eats and drinks more than is needed (いつも必要以上に食べたり飲んだりする人)と定義してありました。One of my friends, Mr. Nakahara, was a glutton. He would often eat my bento .(友だちの中原くんは、大食漢だった。彼はよくぼくの弁当まで平らげたもんさ)中原君がこのブログを読んでいないことを願っていますが、事実です。さて、 自分のことを太っている( I am fat) というのは問題ないですが、本人を前にして、太ってるね(You are fat.)というのは大変失礼なことになります。同様に、ぼくは食いしん坊なんだ (I am a glutton.) はいいですが、本人を前にしてgluttonは使わない方がいいでしょう。どうしても言いたければ、eat too muchくらいで。What a glutton – he ate a whole pizza by himself (なんという大食漢だ。彼はピザを丸々ひとりで食べてしまったよ)  このようにgluttonはあまり歓迎されない、ネガティブなイメージを持っているので注意が必要な気がします。ちなみに、この文はCambridgeから引用したものですが、ここでのピザは日本のピザをイメージしないでください。さて、gluttonにはもう一つ「どんな仕打ちにも耐え抜くひと」という意味もあります。He is a glutton for punishment. は「いやな仕事を好んでするひと。どんな苦難にも耐えられるひと」といったニュアンスですが、限界まで食べたり飲んだりするのがgluttonなので、「極端なくらいまで」何かをするといったイメージがあるそうです。わたしたちは「あのひとは仕事の鬼だとか虫だ」などといったりしますが、とことん仕事するひとならa glutton for workでしょう。Are you a glutton for punishment, taking on that part-time job at night? (夜にそんなアルバイトをしているなんて、あなたは根っからの仕事好きなのですか)(英辞郎)

動詞driveを英和で引くと、車を運転するという意味の他に、「人をある状態・行為に駆り立てる」というのがあります。「自殺に追いやられる」(be driven to suicide)とか「破産に追い込まれる」(be driven into bankruptcy) 等々の例が挙げられ、通常受け身形で使われるとあります。いわゆる「被害」を意味する「受け身」ということでしょうが、Cambridgeにはto force someone or something into a particular state, often an unpleasant one (誰かがあるいは何かが特別な状況、しばしば不快な状況へ追いやられる) という説明があって、受け身に関する言及はありません。まあ、どちらでも使われるということなのでしょう。さて、forceを使って説明してありますから、人であれば、不快な状況に身をおかざるをえない、といった感じでしょう。なぜこのような意味合いを持つのかALTに訊ねたところ、carry something forward (前へ物を運ぶ) がdriveの意味だから、それがネガティブなニュアンスを持つとそのような意味で使われる、ということでした。driveというとすぐに車を連想してしまいますが、T型フォードが誕生してから百年ちょっとしか経っていません。その前は牛や馬を駆り立ててものを運んでいたわけです。そう考えると、この意味のdriveは「牛・馬」のごとく人間を扱かうという風に捉えればいいのではないかと思えてきます。There was a record high of more than 70 million people forcibly displaced in 2018. Most of that was driven by persecution, conflict or violence. (2018年、記録的な多さとなる70000万人超が移住を余儀なくされた。その大半が迫害、紛争、暴力によって引き起こされたものだ) 「迫害、紛争、暴力」といった非人間的な扱いを受けたために祖国を捨てざるをえなかったわけです。ところで、driveには自発的、積極的、組織的に物事を進めるといった意味もあります。たとえばa fund-raising drive (募金運動) とかa charity drive (慈善運動)とか a drive to conserve nature (自然保護運動)などのように、運動を推進するといった場合にも使われます。この場合も人々を駆り立てているわけですが、ポジティブです。このdriveという語にもプラスとマイナスが同居しています。

日本語では「タッチパネル」とい言いますが、英語ではsensitiveを加えてtouch sensitive panelと言っているようです。外国人に訊ねてみたら、ちょっと触れただけで反応することからsensitiveが使われているのだということでした。現在、touch sensitive panelとかtouch-sensitive screen ――どちらも日本語ではタッチパネルと呼んでいるようですが、「スクリーン」が使われないのは、映画なんかの巨大なスクリーンをイメージするからかもしれません―― などIT機器には欠かせないものになっています。The iPhone has been stirring up conversations among tech enthusiasts, with its full-blown music and video player, new voice mail system, and touch-sensitive screen. (iPhoneはハイテク愛好家たちの間で話題になっている。高性能な音楽・ビデオプレーヤー、これまでにない音声メールシステム、そしてタッチセンサー式のスクリーンがついているからだ)(CNN) それにしても、PCの操作にはなかなかついていけません。You can't teach an old dog new tricks. ということわざがありますが、若い頃は機器の操作を間違えたりしたときなどに、ちょっと自嘲気味に使っていました。しかし今ではまったくそうだなあとひしひし身に染みる"生きた"ことわざになっています。

lose one’s shirt 「すってんてんになる」とう訳を載せている辞書があって、あらためて日本語の面白さに気づかされました。英英にはgo brokeとかlose a lot of moneyなどの説明が載っています。直訳すれば「自分のシャツを失う」ということですが、どうしてそれがgo broke (無一文になる) といった意味になるのかALTに訊ねてみたところ、たとえばポーカーのような賭け事をしていて、賭けるお金がなくなったときに自分のシャツを差し出したからだろう、ということでした。日本語では「すってんてん」とか「すっからかん」とか言いますが、いずれも「す」が付きます。調べてみると「す」は「素」なんだそうで、何も着ていない様などに「すっぽんぽん」と言ったりするときの「す」とおなじだそうです。そこで、lose one’s underwearなんていう言い方はしないのかと訊ねたところ、shirtの次はunderwearしかないでしょうね、と言って笑っていました。He started investing in real estate but ended up losing his own shirt. (彼は不動産投資を始めたが、結局大損をしてしまった)

toot one’s own horn 「偉そうに鼻にかける」Websterにはto talk about oneself or one's achievements especially in a way that shows pride or too much prideとあります。まさに「自慢して鼻にかける」といった感じです。"一日一英会話"というブログにはtoot はラッパなどを吹く、hornは車のクラクションや楽器のホルンの意味。このため、本来は警笛を鳴らすという意味ですが、比喩として、ラッパを吹くように自慢をする、となります、と解説してありました。I think Americans are likely to toot their own horns. (アメリカ人は自画自賛することがおおいようだ) 確かにアメリカ人の中にはいつもI’m greatと思っている人が多いでしょうから、遠慮なくtoot their own hornする人もたくさんいるでしょう。I don’t mean to toot my own horn, but I have the newest PC. (鼻にかけるつもりはないけど、ぼくは最新型のPCを持っているよ) この成句についてALTに訊ねたところ、この句は人に不快感を与えるような言い方で、ひけらかす場合に用いられるので、この文のようにI don’t mean to toot my own horn,(鼻にかけるつもりはないけれど)と前置きして自慢するのが紳士的で角がたたないとのこと。ちなみに「鼻にかける」という言い方は西洋人の「高い鼻」に由来すそうです。ともあれI don't mean to toot my own hornを添えてから、自慢するようにした方がいいでしょう。かど(角)が立たないように、そして、つの(角)を突き合わせるようなはめにならないように。

 

fall behind  「落後する」「遅れる」 He fell behind in the race.の訳として「彼はその競争で落後した」とありましたが、fall behindは落後したというよりも徐々に遅れるというニュアンスのほうが強いようです。一番を走っていても追い抜かれてビリになったらfall behindだし、ビリを走っていてもずっとおいていかれるとfall behindです。つまり、以前よりも落ちている意味合いを持つわけです。どうしてfallを使うのか英国人のALTに訊ねてみたら、つまずくという意味でfallを使うのではないかということでした。確かにfall over a hurdleというと「ハードルに躓いて転ぶ」といった感じです。Studies show boys are increasingly falling behind girls. (研究結果によると、男子生徒は女子生徒にますます後れをとるようになってきているということです) なお、in / on などの前置詞を伴うことがあります。いわゆる「分野」の場合はin,「負荷・不利益」のニュアンスならばonと考えればいいでしょう。He is falling behind his class in English. (彼は英語でクラスの仲間より遅れてきている) くどく言えば、この場合、彼は英語の分野でつまずいているわけです。She fell behind on tax payment. (彼女は滞納した) 税金は負担ですから、onになります。