temperは金属を叩いて柔らかくすることを本来意味する動詞だったのではないか、と語ったALTがいましたが、面白いなあと思ったものです。というのも、性格とか気質といったものはある瞬間にひょいと出来上がるなんてことはない。こつこつと叩かれたりして、つまりいろいろなことに遭遇して、あるいは体験して、次第に穏やかになっていくものなのだ。そんな風にそのALTは人間の気質というものを捉えていたからです。さてそのtemperの成句にkeep one's temperがあります。「平静を保つ」といった意味で使われます。直訳すると「穏やかな気質を保つ」ということですが、所有格が付くことで、誰が行動するかを明らかにします。 I was so annoyed with him that I found it difficult to keep my temper.(彼のことがとてもしゃくにさわったので私は平静を保つのが難しかった)(慶応)反意表現はlose one's temperです。I’m sorry for losing my temper. (ついかっとしてしまってごめんなさい) ちなみに、同根語にtemperature (気温、体温)があります。体温も気温も穏やかな方がいいというわけです。

invest は「投資する」という意味だけで捉えるとうまくいかない場合があります。この語は、立身出世のために若者が新しくあつらえた服(vest)に身をつつんで、社会に出たことから、利益を見込んで投資する、といった意味に発展したんだそうです。さてThe government invested millions of dollars in their education. (政府は教育に何百万ドルも投資した) 残念ながら、これは日本の政府に関する記事からの抜粋ではありませんが、ここでは「投資する」で意味は通ります。一方、It’s very exciting that these people have invested in the project for so long. (こんなに長い間、これらの人々がこの計画に精力を注いできたのは、とてもすごいことです) これはCNNの訳ですが、ここではinvestを「精力を注ぐ」と訳してありました。 このように「エネルギーを注ぐ」といったニュアンスでinvestが使われることがあります。利益を期待して「投資する」のと同様に、成果というか、良い結果を期待して、あるいは出そうとしてエネルギーを注ぎ込むといった感じでinvestを捉えたらいいのではないでしょうか。なお、前置詞inとコンビを組む場合のinvestは自動詞になります。

administer a countryというと「国を統治する」といった意味。administer a companyというと「会社を運営する」といった感じ。ところがadminister drugsというと「薬を投与する」といった意味になります。簡単に言えばgiveの意味がadministerにあります。administerには何かをコントロールしたり調整したりするニュアンスがありますから、薬を投与する場合もむやみに与えるのではなく、調整して与えるという風に考えればいいのではないでしょうか。The Department of Defense is testing this medicine to see if it can be administered before service members are exposed to radiation. (国防総省はこの薬をテストしています。軍人が被曝するまえにそれを投薬することが妥当であるかを見るためです)(CNN)

a lapse into bad habitsというと「悪習に陥ること」を意味します。lapseは時が過ぎていくという意味。時が過ぎていくと、物忘れをしたり、純情だった人がいつの間にか悪に染まっていたりすることもあるでしょう。lapseはそういうマイナスな意味合いを持つようです。時が過ぎれば成長して立派になるんじゃないかという考え方もあるでしょうが、残念ながらlapseにはそのような意味はないようです。同根語にcollapseがあります。「一緒に(co) 時を滑る (lapse)」ということから「崩壊する」という意味になったわけです。It was just a lapse of memory. (ど忘れしただけです)  The dialogue restarted after a lapse of three months. (交渉は3ヶ月たってから再開された) また、「時が経過する」という動詞の意味もあります。Two weeks lapsed before Muslim demonstrators took to the streets. (2週間後、イスラム教徒たちが抗議デモを行った) この文に出てくるtake to the streets は「街に出る」ということから「抗議デモを行う」といった意味で使われます。さまざまな街角から人々が出てくるのでstreetsと複数形で使うのだそうです。He lapsed into a coma. (昏睡状態に陥った) lapse intoで「次第に陥る」といった意味で使われます。

「報告」という意味でのaccountは公式な報告ではなく、事件の目撃者や関係者が自分の立場で見たままを話すといった感じです。報道関係者が取材を積み重ねた報告はreportでしょう。「報告する」という動詞としての用法はreportにはありますが、accountにはないようです。強いて言うならば、account for (説明する) という言い方が「報告する」にもっとも近いかもしれません。According to some eyewitness accounts, there were at least three gunmen. (目撃者の話によると、最低でも3人の狙撃者がいたそうだよ)(EJ) ちなみに、学生や生徒が提出するレポートはpaperです。さて、最近では、アカウントというとネット関連で使われることが多くなりました。どことなく「説明」とか「報告」などの意味とつながらない気がしますが、銀行口座のことをa bank accountといったりしますから「特別な報告」が「口座」へ発展したとも考えられそうです。たとえば口座番号に見られるように、口座はその本人に限った特別な「報告」だと考えれば繋がらないこともないでしょう。ネットでもその人を特定できるものをアカウントというのではないでしょうか。We are learning more about a massive data breach at Yahoo! back in 2013 that affected every single customer account that existed at that time. (当時存在していた全ユーザーアカウントに影響を与えた、2013年に起きたヤフーの大規模データ漏洩事件についてさらにわかってきた)

land a jobというと「働き口を見つける」といった意味です。「上陸させる」「着陸させる」という意味のlandに、「捕まえる」「手に入れる」という意味があるのが面白いと思います。landはもともと「陸地にもってくる」というのが原義なので、おそらく魚などを陸揚げするところから「手にいれる」などの意味に発展したのでしょう。自分の土地に収穫を持ってくる、ということから「収入を得る」「仕事を手に入れる」といった意味合いになったとも考えられます。His ultimate goal in coming to Japan was to land a job. (彼が日本へやって来た第一の理由は仕事を手に入れることだった)  He landed a six-digit job. (彼は年収10万ドルを超える仕事を得た)(レクシス) ちなみに、six-digitは6桁ということです。 This is an example of how your net rep can help you land a job. (これはインターネットでの評判が職を見つけるのにいかに役立ったかという事例です) なおnet repはInternet reputationが短くなったものです。 Liya is the first black woman to land a coveted cosmetics contact with Estee Lauder. (リヤさんは誰もが望む化粧品会社、エスティローダーとの契約を初めて得た黒人女性です)

in advance はbeforehandと同じ意味で「前もって」といった意味。inは「位置」あるいは「時」を示すと考えればいいでしょう。I'd like you to pay the money in advance. (代金は前払いでお願いしたいのですが) in advanceが日常語。beforehandの方がフォーマルだそうです。If you are going to come, please let us know a month in advance. (おいでの節には一か月前にお知らせください) この文のように具体的数字(ここではa month)がin advanceの前に来ます。その点は日本語と同じです。どこの大学だったか忘れてしまいましたが、数年前に、You should prepare for your exam well in advance.というような内容の英文を書かせる英作文の問題が出たことがあります。「かなり前から」のところをwell in advanceではなく、in advance wellのように答えたひとが多かったようです。副詞が二つ並ぶ場合も重い方、つまり文字数の多い方が後ろになります。ですから「かなり前に」はwell in advanceとなるのですが、些細なことで差をつけようとする、意地の悪い問題だったなあ、とふと思い出してしまいました。