sitting 「現職の」何もしないで座っている、ぶらぶらしているというイメージを持つsitですが、sittingと形容詞になると、「現職の」という意味も持ちます。机に向かって座っているのでそういう意味になるのだろう、とアメリカ人のALTはちょっと自信なさげに説明してくれましたが、その地位に座る、つまり社会的な席につく、ということからsitが使われるようになったのではないかなと個人的には推測しています。Barack Obama became the first sitting U.S. president to visit Hiroshima. (バラク・オバマ氏は現職大統領として初めて広島を訪問した)

relinquish 「諦める」「権利・財産などを放棄する」語根のlinqu-は「放棄する」という意味ですが、綴り字から推測するとleaveとかlendと関連があるような気がしますーー調べていないので確かなことは言えませんが……。give upとかlet go ofなどと同じような意味ですが、強制的に諦めさせる意味はなく、自発的であっても不本意であっても自分の意志で諦める場合に使われるようです。relinquish A to Bで「AをBに譲渡する」という意味で使われたりします。前置詞toはあのyield to (譲る) のtoと考えればいいでしょう。He finally relinquished all rights and claims to the new president. (ついに彼はあらゆる権利を新社長に譲った) Disney is relinquishing control of its world famous cartoon studio to incoming Pixar’s executives. (ディズニーはその世界に名だたるアニメ部門の経営陣を、参入してくるピクサーの経営陣に渡すことになっている) 因みに、非行を意味するdelinquencyも同根語ですが、「義務を放棄する」という意味から「非行」「怠慢」などの意味になったものです。正しい行いとは義務を果たすことだ、ということでしょう。体調がよくないはずのメルケル首相はサミットに出席しました。首相としての義務を果そうとする彼女の姿にこそ学ぶべきものがあると思うのですが。

死人が生前の姿で現れるのがghostですから、Hamlet saw his father's ghost. (ハムレットは父の亡霊を見た)ということになりますが、まだ生きていると思わせるghostだったから、彼は罪の意識に蝕まれ、次第に病んでいくわけでしょう。同じく「お化け」といった意味で使われる phantomは文学的な意味合いが強く、「亡霊」というよりも、はっきりしない幻影となって現れるものといったかんじがします。語源的にはphan (ギリシャ語) がfan (ラテン語 ph→f) になったファンタジー(fantasy)も同根語で、実際に目には見えないけれども、心の中に現れる、といったニュアンスで捉えればいいのではないかと思います。fantasyと繋がっているからでしょうが、phantomは人間だけでなく動物なども対象とします。ですから、必ずしも「死者の霊」であるとは限りません。死者に似た人間が現れたり、景色に人間の姿が見えたり、現れるはずのないものが眼前に現れたり……そのような、いないはずの連中が目の前に現れたりする「現象」をphantomと捉えればいいと思います。簡単にいえば、空想上の存在、といったニュアンスではないでしょうか。Phantom of the Opera became the longest-running play in Broadway history. (『オペラ座の怪人』はブロードウェー史上のロングラン作品となった)(CNN)

You are always sitting on the fence.を「君って、煮え切らない奴だな」と訳したのがありましたが、ちょっと違和感を覚えました。というのも、日本語の「煮え切らない」はものが十分に煮えていないということから、ぐずぐずしている、中途半端だ、といったニュアンスがあるからです。この文に登場しているsit on the fenceはto delay making a decision (Cambridge Dictionary)ということですから、「決断を遅らせる」というのがコアの意味になります。イメージとしては、フェンスに座って右に行くべきか左に行くべきか決めかねている、といったかんじでしょうか。あるいはことの成り行きを見守っているといったかんじ。それで「煮え切らない」というよりも「どっちつかず」といったニュアンスが強いように思えます。The headmaster sat on the fence during the dispute between parents and teachers. (校長は教師と親たちとの激論中にどっちつかずの態度をとった) なお「中立的な立場で物事を眺めるひと」のことをfence-sitterといいますが、成り立ちは同じです。Cartoonists are great fence-sitters. (漫画家はまさしく傍観者なのです) このようにsit on the fenceはネガティブではなくニュートラルに捉えたほうがいいようです。

sinceは普通、前置詞や接続詞で使われることが多いので、sinceで突然文が終わってしまうとなんだか奇異な感じがしますが、文末に出てきた場合はsince thenと考えればいいと思います。Oliver, a long-term resident in the country, was arrested last December in the city of Chiang Mai and has been in jail since. (オリバーは同国に長年住んでおり、昨年12月にチェンマイ市で逮捕されて以来、拘置所に入っている) この場合、since then (= last December)ということです。わかっていること、いわゆるunderstoodは繰り返さないというのが英語の性質です。

 

simulate をCambridgeでひくとto do or make something that looks real but is not realとあります。大ざっぱに言えば、本物のように見せかけるといった感じです。シミュレーションという日本語が定着していますが、英英のニュアンスからすると、あまり言い意味では使われないようです。語根のsimulはsimilar(似ている)という意味。そこから「(本物に似ているように)見せかける」といったあまりよろしくない意味に発展したのでしょう。Some moths simulate dead leaves.(蛾の仲間には枯葉に擬態するものがある) I would often simulate illness. (ぼくはよく仮病をつかったものだ)

possibleは「可能な」という意味の形容詞ですが、 最上級やall, everyなどを強調して「可能な限りの」という意味でも使われます。I'll do everything possible. (できる限りのことをしましょう)  You'll get the best possible care at this hospital.(この病院では最高の治療が受けられるでしょう) このように名詞の前後に置かれますが、everyやallなどの限定詞が先に来ます。強く言いたいものが先行するのが英語の特徴の一つですが、ここでも同じだと捉えればいいでしょう。Never did I think we would get 4,000 e-mails from every possible part of the country. (私たちが4000通ものメールを国内のあらゆる地域からもらうなんて思ってもみませんでした)